「へそ展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「へそ展」日記は、「へそまがり日本美術ー禅画からヘタウマまで」展、略して「へそ展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


仙厓さんの梅 2021

へそまがり日本美術展には、「何これ!」というような絵がたくさん出品されますが、中でも、図録編集チームが強く推したい作品のひとつが、仙厓が描いた《豊干禅師・寒山拾得図屏風》です。

仙厓は、江戸時代中期、博多の聖福寺という格式ある禅寺の住職を務めた「えらい」お坊さん。えらい禅僧、なんて言うとなんだか難しい絵を描いたのでは、と思うかもしれませんが、それが全く逆。すごーく大胆で自由、今の私たちから見ても、はちゃめちゃすぎて面白い作品を描いたのです。

▲仙厓《豊干禅師・寒山拾得図屏風》(図録より)

《豊干禅師・寒山拾得図屏風》は、そんな仙厓の代表作。仙厓が隠居後に過ごした古刹、博多・幻住庵から出品される大作です。

▲図録に収録するため、幻住庵で撮影を行いました。

先日、へそ展の企画者である府中市美術館の金子学芸員が、幻住庵を2年ぶりに訪れ、こんな写真を送ってくれました。

▲博多・幻住庵にある「雲井の梅」。

一見、なんの変哲もない、立派な梅の木ですが、「雲井の梅」と呼ばれるこの梅、実は、仙厓ゆかりの由緒ある木なのです。これは新緑の写真ですが、図録には満開の時の写真を掲載しています。

今見てみると、これで当たり前、という感じですが、実は、ここに至るまでには紆余曲折があり……その経緯について、金子学芸員が書いてくださいましたので、以下に、改めてご紹介させていただきます!(図録編集チーム、久保)

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2018年11月、仙厓の作品を撮影するため、へそ展担当学芸員の私と、講談社の図録制作チームで、博多の幻住庵を訪ねました。仙厓がたくさんの絵を描いた場所です。

非公開のお寺ですが、境内にある仙厓ゆかりの場所や石碑などを図録で紹介したいと思い、撮影終了後、ご住職に一つ一つ案内していただきました。

その一つが「雲井の梅」という梅の木。福岡藩主から仙厓が賜ったという、重厚かつ整った、見事な枝ぶりの古木です。そして、この時、つまり11月に撮った写真を、図録のコラム「仙厓さんのアトリエ」のページに入れて、こんなレイアウトを組みました。


さて、展覧会の開幕が近づいて、作品をお借りするため、私は再び幻住庵にうかがいました。図録の最終校正を残すのみとなっていた2月22日のことです。

冷たい空気の中、気を引き締めて門をくぐり境内に入った瞬間、今まで見たこともないような美しい紅梅が目に飛び込んできました。あの雲井の梅です。

あまりの素晴らしさに、作品の借用作業を終えると、すぐに写真を撮らせていただきました。そして、お寺を出発し、福岡市内を走る美術品専用トラックの中で、「そうだ、この興奮を、ツイッターでみなさんにお伝えしよう!」と思いつきました。

ツイッターを担当している図録制作チームの編集者に、画像のサイズを小さくしてメールで送ると、まもなく驚きの言葉が返ってきました。「図録の写真を差し替えるから、すぐに大きなサイズの画像を送ってください!」。すでに最終確認を残すのみだった図録の製作ですが、あまりに美しい梅を見て、なんとしてでも図版を差し替えようと考えたのです。

そうして出来上がったのが、このページです。雲井の梅は、花が大きく、花弁にはふっくらと厚みがあって、それはそれは見事です。本物の花の美しさをどれだけお伝えできているか、心もとないのですが、仙厓さんも愛でた梅を、ぜひ図録でご覧ください。

(2019.4.4 府中市美術館、金子)

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