「へそ展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「へそ展」日記は、「へそまがり日本美術ー禅画からヘタウマまで」展、略して「へそ展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


幽霊

一度も見たことがないのに、なぜか、その姿を思い浮かべることができるもの。

UFO、火星人、河童、人魚…。 いろいろありますが、幽霊もそのひとつ。

脚がない、とか、死装束を着けている、とか。

既存のイメージから影響を受けた、あれやこれやの先入観。

勝手を申し上げますと、作品鑑賞においては、画題に対する先入観の4割位が「だよねー」、6割位が「そうきたかー」だと、丁度良い塩梅(へそまがり度高めな筆者個人の見解です)。

さて、「へそ展」でご紹介させていただく幽霊図2点の塩梅はいかに?

4月上旬、所蔵先の福岡市博物館で事前調査をさせていただきました。

まずは《お菊幽霊図》。

怪談「皿屋敷」などで知られるお菊さんが、幽霊となって井戸から現れる場面です。

地面に散らばる皿のうち、1枚が割れています(お約束)。

次に《墓場の幽霊図》。

画面右下のイヌハジキ(犬弾き:犬が墓地を荒らすのを防ぐ竹製の囲い。四十九日頃まで設置)から立ち上るように、幽霊が登場。

彼岸花のシルエットが、臨場感を醸します。

目をひくのは、幽霊の顔貌や毛髪の描写。

この世に未練を残した人間の「苦い」心情に迫り、死者の容貌に迫真性をもたせようと、陰影表現と細線描写を駆使する画家の情熱を感じ、「そうきたかー」は、瞬時に6割超過。

作者の祇園井特(ぎおん・せいとく)は、経歴不詳、諸説あり、という謎の絵師。

寛政~文政のころ(1789~1830)に京都で活躍したとされ、残された肖像画や美人画から、独特の感性がうかがわれます(「へそ展」では、祇園井特の美人画もご紹介)。

ビターな味わいに魅力を感じる鑑賞者にはぴったりの、祇園井特の幽霊図。

夏の北海道をさらに涼しくしてくれること受け合いです。

(北海道立近代美術館、齊藤)

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