「へそ展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「へそ展」日記は、「へそまがり日本美術ー禅画からヘタウマまで」展、略して「へそ展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


札幌ですごい白隠が「初公開」。そして、「初公開」がいっぱいあるのはすごいことなの?

へそ展、札幌での開催まであと2ヵ月を切りました。

この展覧会は、2019年の東京での開催の際には、新聞・雑誌などで様々にご紹介いただきました。

中でも最も大きな話題を読んだのは、徳川家光が描いた《兎図》が初公開される、というニュースでした。2018年12月20日の朝日新聞も、「徳川家光は『ヘタウマ』画家? 水墨画を公開へ」という見出しで大きく取り上げています。


「徳川家光は『ヘタウマ』画家? 水墨画を公開へ」


へそ展における「初公開」作品は、家光だけではありません。実に、40点を超える作品が、へそ展で初公開の作品。しかも、いくつかの作品は、今回の札幌展で初めて公開されるのです。

こちらがそのひとつ。白隠の《楊柳観音》です。真っ黒の背景に、薄墨で輪郭をとった白い観音様が浮かびます。力強くて、かっこいい、さすが白隠!と言いたくなります。

金子学芸員によると、「白隠の作品の大半は白い紙に線だけで描かれたものですが、まれに墨でバックを真っ黒に塗り込めた作品があり、その迫力は白地の作品とは全くの別次元」とのこと。

「そんな強烈な黒バックに、奇妙な姿の観音さまが、くっきりすぎるくらいくっきり浮かび上がって、見た瞬間、鮮やかすぎて、きれいすぎて、恐ろしいような、不思議な力に金縛りになりそうです。お顔の表情が、たた慈悲に満ちた観音さま、というのではない、俗っぽいような、怖いような、優しいような、言葉で言い表せない何かを放っています。白隠は生涯に途方もない数の絵を描いていますが、こんな念入りに作り込まれた作品は、きわめて珍しいです。」と話します。

そんなすごい作品が札幌で初公開とは、本当に楽しみです! 写真は、金子学芸員が京都での調査時に撮影したもの。かなり傷んでいた表具を付け替えるため、裂を合わせているところです。もちろん、札幌の会場では、仕立てられた完成品が展示されます。 

ところで、初公開作品がこんなにたくさんあるって、そもそも、どういうことなんでしょうか?

そのことについて、以前、金子学芸員に伺いましたので、改めてご紹介させていただきます。

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今日は、「初公開」や「新発見」のことについて、少し考えてみました。

近年、展覧会の開催にあわせて、初公開作品のニュースが新聞やテレビなどで華々しく報道されたりしています。

▲へそ展で展覧会初公開の徳川家光《兎図》。

「〈初公開〉〈新発見〉ってどういう意味?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。ここで言う「新発見」とは、近年の研究者に知られることなく、展覧会や本などでも紹介されたことのない作品のこと。本だけで紹介されたことがある場合には、展覧会「初公開」となるわけです。

そこで、へそ展の図録の制作が始まった頃、私も金子学芸員に聞いてみました。

「へそ展では初公開とか、新発見みたいな作品はあるんですか?」

すると金子学芸員からは

「ありますよ、おそらく数十点にもなるんじゃないでしょうか。〈春の江戸絵画まつり〉はいつもそうです」

と、驚きの答えが返ってきました。

「研究の成果を展覧会で発表するのが学芸員の仕事。ですから、いわゆる“新発見”とか、”初公開”といった作品はいつもこれくらいになるんです」

なのだそうです。本当にびっくりしました。

でも、言われてみれば納得で、だから〈春の江戸絵画まつり〉ではいつも、「こんなの見たことない!」という面白い作品が並ぶんですね。府中市美術館での展示をきっかけに、その後、一躍、有名になった作品も思い浮かびます。

そして、金子学芸員の予想通り、へそ展での展覧会初公開作品は、最終的になんと44点になりました(*札幌展では43点)。

▲こちらも展覧会初公開、仙厓の《十六羅漢図》。「こんな十六羅漢は見たことがない」と金子学芸員。

しかも、そういった”新発見”だけでなく、美術史的にも重要と定評のある作品も、さりげなく出品されていることもすごいところなんです。ぜひ、見にきてください!

(図録編集チーム、久保)

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