「へそ展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「へそ展」日記は、「へそまがり日本美術ー禅画からヘタウマまで」展、略して「へそ展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


寒山拾得

寒山拾得(かんざんじっとく)は、「へそ展」北海道巡回で8点も紹介される画題であり、頻出ワード。

寒山拾得って、人名なのか地名なのか見当がつかない、という方も大丈夫です。

本展図録『へそまがり日本美術』(2019年、講談社刊)の「画題案内」から、ポイントを要約!

① 唐の時代、浙江省の天台山国清寺にいたという伝説的人物。

② 寒山は、寒厳と呼ばれる巌窟住みで、ときどき寺に現れた。

③ 拾得は、豊干禅師に拾われて、寺の台所仕事をしていた。

④ 二人は常に奇矯なふるまいで僧らを驚かせた。

さらに、中国では10世紀頃から、日本では鎌倉時代末頃から、絵に描かれていたとのこと。

それだけ長く描き続けられてきた画題には、きっと、描く人や見る人を惹きつける理由があるはず。

とくに「奇矯なふるまい」の表現は、作者の腕の見せどころ、鑑賞者の見どころ、ではないかしら。

寒山拾得の二人が、圧倒的な笑顔で微笑みかける、岸駒の《寒山拾得図》(部分、敦賀市立博物館蔵)。

この笑顔を見ると、「きみの笑顔が好き」とか「あなたを笑顔にしたい」と言う時に期待する笑顔とは、どこか違う気がします。

北海道のみ展示予定の、白青山《寒山拾得》(部分、当館所蔵)は、どうでしょう?

「笑顔には、いろんな種類があるよね…」と、いやに、神妙な気持ちにさせられます。

徳島県出身の白青山(つくもせいざん)は、東京美術学校で日本画を学び、北海道の日本画発展に尽力した画家。

この作品は、明治画壇の巨匠・橋本雅邦が描いた《寒山拾得図》(フリア美術館蔵)に倣ったものと考えられます。

「へそまがりな感性」は、連綿と、あまねく、息づいているんですね。

「へそ展」で出会う、寒山拾得。

その笑顔は、 あなたにとって、忘れられない笑顔になるかもしれません。

(北海道立近代美術館、齊藤)

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