「へそ展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「へそ展」日記は、「へそまがり日本美術ー禅画からヘタウマまで」展、略して「へそ展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


後期展の見どころ

19点の展示替えを行い、本日から「へそ展」後期が始まります。

前期に見たけど、もう一度見たい!という方。

前期は見逃したけど、後期こそ見に行きたい!という方。

どちらさまにもお楽しみいただきたく、各章から「新顔」をご紹介いたします。

禅画の世界は、型破り。

日本においては、禅と茶の結びつきは強く、どちらも「不完全であること」を重んじます。

型破りで、不完全-。

これを書と絵であらわすとこうなります、という模範事例のような作品がこちら。

東嶺円慈 《茶柄杓図》 早稲田大学會津八一記念博物館蔵

白隠慧鶴の高弟であった東嶺円慈の筆遣いは、まことに豪放磊落。

茶の柄杓が、竹筒に入っているさまを描いて、人々に説かんとしたことは一体なに…?

俳画や南画の世界は、格式ばったことを嫌います。

あえて、無骨に、素人っぽく。

しかも、そのキャラ天然なの?と思わせる、魔法のような骨抜き&脱力作品がこちら。

冨田渓仙《牡丹唐獅子図》福岡県立美術館蔵

平たい顔の獅子は、やけに親しみは感じるものの、豪華絢爛さからはほど遠く…。

同上(部分)

故郷福岡ゆかりの仙厓に傾倒した冨田渓仙の、禅画への関心がうかがわれます。

大作《沈竈・容膝》(通期で展示中/福岡県立美術館蔵)と比較しながらの鑑賞も「おつ」です。

へそまがり史上で輝くスターのひとり、伊藤若冲の作品は2点とも展示替えしています。

布袋様が弥勒の化身として現れた、と聞けば大仰ですが、何ともほほえましい作品がこちら。

伊藤若冲 《伏見人形図》

ムラのある塗り方や、ゆるやかに歪ませた描き方も、巧みな「素朴」表現(なんだか矛盾しているようですが…)。

同上(部分)

若冲という画家は、細密な動植物画はもちろん、素朴な人形図にも、徹底ぶりを見せつけます。

神様なのに、なぜか笑いをさそう、突き抜けた感性と画才で意表をつく作品がこちら。

伊藤若冲 《福禄寿図》

 超絶技巧の濃厚若冲も良いですが、水墨画のあっさり若冲は京野菜の漬物のごとく、意外にピリッとした後味を残します。

もっと刺激的な、苦~い風味を求める方にはこちら。

狩野永朝 《大黒天図》

米俵を踏まえて、打出の小槌を振り上げる、台所の神様。

同上(部分)

よく見ると、まるで木彫りの能面のように立体感のある目尻のシワ、膨らんだ小鼻、ほうれい線、そして、お歯黒に耳毛まで。

京狩野派の画家の高い技術が、大きなお顔に集結しています。

わざと滑稽な言動をするのが、おとぼけ。

まるで「素」がそうであるかのようにとぼけるには、実は、高度なテクニックやセンスが求められます。

長沢蘆雪 《なめくじ図》

なめくじなんて、と思わずに、どうぞじっくり見て下さい。

同上(部分)

暗褐色の帯が走る背中、大きな触覚の先にある目。

こんな小さな画題を、ふざけて描いたように見せていても、蘆雪の画技はダダ漏れです。

(北海道立近代美術館、齊藤)

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